Forest Baubiologie Studio,森林・環境建築研究所

 
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03 森林共生住宅への手引き
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杉材と手仕事が紡ぐ、圧倒的な安心感

木材は人にとって圧倒的に安心のパートナー

木材は人にとって圧倒的に安心のパートナーです。人は金属を触る時には少し身構えます。もしかしたら熱いかもしれないし、冷たくて指がくっついてしまうかもしれない。でも鉋で磨かれた木肌には、思わず触りたくなる、柔らかな佇まいがあります。そして、実際に触ると気持ちが良くて、もっと触っていたいと思います。また、新築でまだ木の匂いのする木造住宅に入ると、日本人の多くは深く息を吸って、「気持ちが良い」「癒される」といいます。その空間では深く呼吸ができて、その空間を構成する素材にはずっと触っていたい。それはきっと、木材が古くから日本人に愛されてきた、最も身近な有機素材だからではないでしょうか。

日本の誇る自然素材・杉の素晴らしさ

日本の四季は美しいと言われます。適度な緯度に位置し、海に囲まれ中央に山脈を持つ特殊な条件がこのような気候を生み出すわけですが、夏は蒸し暑く冬の寒さは結構厳しくその上乾燥します。この気候下で育成してきた極めて日本的な日本原産種の木が杉です。杉の学術名はクリプトメリア・ジャポニカ(隠れた日本の宝という意味)。木は100年の単位で生きる生物ですから日本原産のこの種はこの地に一番適合してきたことを証明する生物だともいえるでしょう。

手入れの行き届いた天竜の森林。最後は葉枯らし乾燥させる 写真=天竜T.S.ドライシステム

生命の複雑な機能を考えれば、有機素材の可能性は工業建材とは比べ物になりません。天然乾燥で、細胞の状態をできるだけ壊さないようした杉は、よく知られている調湿能力はもちろんのこと、有害な二酸化窒素などを吸収する、空気の浄化能力があることもわかってきました。さらには、杉材が放つ揮発成分がストレスを下げ、血圧を安定させて、眠りを助けるなど、鎮静作用があることもわかっています。

森林共生住宅では、住居内環境が住人の生命力を向上させることを、家本来の役割として追求しています。そのために、日本人にとっても古くから馴染み深い「杉=日本の隠された宝」を空間素材として起用することは、もっとも自然で確実な方法の一つであるといえるのです。

伝統的な手仕事がもたらす1/fのリズム

森林共生住宅では杉の木肌をきれいに見せることにこだわります。木目は個体ごとに異なり、自由に現れているように見えますが、実は1/fの視覚的なリズムを刻んでいます。木肌の美しさにこだわるのは、人が心地よいと感じるそのリズムをできるだけ壊さずに、無理なく室内に取り込むことを目指しているからです。良い杉材を選び、日本の伝統技術を持つ腕の良い職人に手鉋(かんな)で仕上げてもらうと、それは美しく、人の肌のようにすべらかで、しっとりと輝きます。だから最終仕上げは鉋で撫でてもらって終わりとします。塗装の必要はありません。

木を愛する森の国・日本に古くから伝わる伝統工法が素晴らしいのは、職人が全知能と技能を投入して「木材」に対峙し、1つとして同じものがない命の素材にこだわってきた技術だからです。それが、極めて人間的な生産手段であったからこそ、空間の人間的豊潤さを創出してきたのであり、命が刻む1/fのリズムと連動して調和をもたらのです。

私たちが取り組む森林共生住宅では、杉の名産地からできるだけ良質な材を選びます。命をいただく杉への敬意と感謝を込めて、伐採にも立ち会ってきました。良質な有機素材を、腕の良い職人の手で仕上げてもらうこと。それは、「住人の命を育み守る家づくり」のためにもっとも基本的で、もっとも重要な要素であり、工場生産部品のアセンブリで成立する多くの現代住宅とは、一線を画しています。

 
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