Forest Baubiologie Studio,森林・環境建築研究所

 
facebook
03 森林共生住宅への手引き
Home > 森林共生住宅への手引き

森林共生住宅への手引き

住宅性能は、人の命にかかわること

家の中の事故、例えば転倒、ヒートショックによる脳血管障害など、住居内の不慮の事故で亡くなる人の数は年間1万人もいるということをご存知でしょうか?

乳幼児や高齢者の住居内事故死亡数は交通事故死者数よりも多く、そのうち高齢者の死因の第1位は溺死だといいます。よく知られているバリアフリーと比較すると、溺死の原因となるヒートショックへの認知度はまだ低いかもしれません。しかし、冬寒い日本の住宅では、寒い脱衣所から温かい浴室に移動した時にヒート ショックを起こし意識を失うケースが多く、これが溺死につながります。日本の住環境における温度差管理が不十分であることを示すわかりやすいデータであると言えるでしょう。

人の生命や健康を脅かす住居といえば、他にも壁内結露等によるカビや、建築資材から揮発する化学物質による室内空気環境汚染によるシックハウス症候群、家ダニやハウスダストによるアレルギーの問題もよく耳にします。本来は生命を守るための住宅が、このような重大な欠陥を抱えて市場にでているということは危惧すべき事態です。

何のために住宅を購入するのでしょうか?

個人が住宅を所有する最終的な目的は何でしょうか? 日本で資産価値があるのは「土地」だけであり「家」には価値がありません。欧米では土地と建物とは切り離されずに一体で価値が形成されるので、長く住むほどに「その場所」は住みやすくなると考えられ、資産価値も上がっていきます。

一方、日本の場合は25年で上物(住宅)は価値がゼロになってしまいます。日本では住宅の所有と同時に不良資産を抱えたことになるので、賃貸料を払うのがもったいないからといって、ローンを組んで建売住宅を買うなどということは、本当に無駄なことです。

では、どんな「マイホーム」なら、お金をかける価値があるというのでしょうか。

現代の住宅は、広告がつくるライフスタイル・イメージに影響された視覚情報に偏重しがちですが、「家」に求めるべき最も重要な価値とは、住む人の命を守ること以外にはないと私達は考えています。その家に住む人の「寿命が延びる」「健康が向上する」、家族の健康、自分の健康を担保するための家、元気で長生きする為の力を与えてくれる家でなくてはなりません。

chart1

よく眠れる、長生きできる家

戦後の経済発展は私たちの暮らしを便利にした一方で、それまで保たれていた人と自然との調和を壊し、さまざまな現代病を生み出す原因の1つとなっています。

例えば近年よく耳にする睡眠障害は、鬱病や認知症あるいはホルモン分泌や自律神経系に影響を及ぼし、うつ病患者の80%に見られる症状だともいわれています。生活習慣病の発症リスクを高め、肥満や糖尿病、高血圧の危険因子でもあり、さらには免疫系にも作用し感染症やがんのリスクを高めるということもわかってきました。よく眠れることは、健康で長生きできる人生にそのままつながっています。

良質な眠りを得るためにはどうしたら良いのでしょうか。規則正しい生活や身体にあった寝具、運動や入浴習慣など様々な取り組みがありますが、それらの時間を包む家についての研究はまだまだ不十分です。概日リズム(サーカディアン・リズム)をはじめ、室内の温度や湿度、静寂、匂いなど、良質な眠りを助ける環境条件の多くは住宅環境に依存するというのに、です。

良い睡眠を支える環境条件の中で最も重要なのは、概日リズムです。朝すっきり目覚めて昼間に活発に活動できて、夜はスムーズに眠りにつき朝までぐっすり。この理想的な睡眠の流れは覚醒中枢、睡眠中枢が、概日リズムによって正しく機能していないと得ることができません。概日リズムに最も影響を及ぼすのが光です。1日のサイクル、朝ー昼ー夕方ー夜 と、自然のリズムで変化する光環境を室内に取り入れて、体内時計を本来の概日リズムに同期させることが大切です。

 

森林環境を「森林共生住宅」に写し取る

私たちは、森林医学のエビデンスに基き、森林環境を写し取る「究極の木の家」を研究しています。森林環境には人を健康にする力があります。「究極の木の家」で、人は均質で機械工業的な都市のストレスから開放され、生命が持つ本来のリズムを取り戻すことができます。良く眠ることができて、気持よく起きることができる。呼吸が深くなり、疲れを溜めにくくなり、免疫力が高まり、病気をしにくくなる。
夢のように聞こえるかもしれませんが、私達はそれこそが「家」本来の役割であると考えているのです。一般にエコロジー住宅とは、太陽エネルギーや雨水といった外部資源を積極利用するものと思われがちですが、本当のエコロジー住宅には、人間の内部環境を持続可能で正しく整える役割があると考えます。

森林・環境建築研究所が提案するのは、より高い次元で健康を増進していく家づくりです。森林がもつ生命のリズムを住宅に写し取り、太陽と地球の関係がつくる熱や湿度や気流の摂理をしなやかに受けとる設計技術があります。

森林環境建築研究所では、この「究極の木の家」を「森林共生住宅」と呼んで研究と実践を重ねています。

 
ページ上部へ戻る