調和する不規則性を表す数式、「1/f」特性
自然の背後にある規則性 P∝fn (n=-1)
私たちの世界を見てみると、規則正しく動いているものと不規則に動いているものがあります。規則正しく動くものはほとんど機械的なもので、電気的エネルギーを使って機能しています。それに対して、風のそよぎや水の流れ、星の瞬きなど、自然現象の動きは不規則であると思われています。ところが不規則性には「ただの不規則」と「調和のとれた不規則」があるのをご存知でしょうか。実は生命現象や自然現象の変動は、単なる不規則なリズムではなく調和のとれたリズムで、その根底にはある数学的法則があります。数学的に記述できるのですから、それは一見不規則に見えるというだけで実は不規則ではありません。この根底にもっている特質、すなわち隠された規則がP∝fn (n=-1)すなわち1/f特性といわれるものです。簡単な数学で説明しましょう。
星がまばたくリズムは「1/f」で調和している
星のまばたき現象を例にとって説明します。まず、星のまばたきに見られる明るさの時間的変化を測定してグラフを作ってみます。
星のまばたきのリズムは、チカチカと不規則に変動していますから、グラフも一見規則性がないように見えます(下図一番上・「W」グラフ)しかし、数学的にはどんなに複雑なリズムでも、単純リズムの和で表すことができます。複雑なリズムから、単純リズムを取り出す方法をフーリエ変換といいます。この方法で星のまばたきのグラフも以下のようにn個の正弦波に分解することができます(下図「W1〜Wn」グラフ)。
「星のまばたきのグラフ波形」はw1+w2+w3+………+wnで表せることがわかります
次に、ここで抽出された正弦波それぞれの振動数と振幅を読み取り、縦軸に振幅P、横軸に振動数fを取って別のグラフを作ると、下図のようにシンプルで美しい曲線が抽出されました。
このように、振幅と、振動数の関係が、P∝1/f になっているとき、このリズムは1/f特性をもつといいます。また、ロウソクのゆらめきや、川の流れ、ヒトの心臓の鼓動など、自然現象のほとんどすべての一見不規則で複雑なリズムには、1/f特性があるということもわかっています。自然界や生体、いのちの営みには、ある同じリズムが隠されていて、それが数学で表現できてしまう。この事実に驚かざるを得ません。