月的寓居 III 秋谷海岸の家
葉山の秋谷海岸沿い、海を臨む傾斜地に建つ住宅。絶景地だが、建物にとっては強い潮風と湿気、照りつける太陽熱と紫外線による過酷な自然環境にあった。一般には耐候性の強い工業化学建材を使うべきだが、かねてより無垢の木の可能性を試したいと願った。この挑戦に賛同してくれた建て主は、天然指向の木の文化を日本に取り戻そうとする活動「木暮人倶楽部」の創設者である。ノンケミカルで透湿呼吸をする躯体を追求し、天竜の素晴らしい杉材を活かして完成した住宅には音の良い小さな音楽ホールもあり、来客が多いと聞く。建物探訪TV番組でも紹介され話題となった。
●面積:敷地 341.56m²、延床 134.38m² ●家族構成:夫婦
海を臨む南側外観
2階のリビングからダイニングと台所を見る
左上:地階の音楽ホール。傾斜地で半分地下に埋まっているが、RC外断熱とスラブへの蓄熱冷暖房で建物全体への体温をつくりだした
左下:明るく広々とした台所
右:南側全景
2階の階段室を見る。階段を通して上下に通風・採光がとれる
月的寓居シリーズとは
「月的寓居」シリーズは、日が暮れてからの時間を「夜」と扱わずに「昼化」させる現代住宅は本当の安息地にはならないのではないか、という課題に答えようとしたもの。住人の体内リズムが「夜」を感じて安息できる住宅設計を目指して「ムーンハウジング」「月的寓居」と名づけた。